先月にさかのぼりますが、ダルムシュタットでは毎年5月にユーゲントシュティールデイズというイベントを行っているようです。来客のある日だったので、夕飯の後にみんなで散歩がてら出かけたらどうかと考えていたのですが、宴も長く続き、郊外に住む客人たちは帰宅。結局23時過ぎてひとりで出かけてきました。木々に提灯が下げられ、マチルダの丘全体がライトアップされていてきれい。中世の衣装(?)をまとった人たちが火を持ってパフォーマンスしていました。コルネリア・フンケの『魔法の声』の世界みたい。普段は公開されていないダイタース邸、グリュッカート邸、オルブリッヒ邸へも入ってみたかったけれど、チケットも取ってなかったし、また来年。
丘を取り囲むようにアートマーケットが並びます。素敵なランプなどに目を奪われつつ、雨がぽつりぽつりと落ちてきたので帰路につこうと歩き出したところ、目についたのがマルティヌスの家。灯りが点いて人が出入りしているのに誘われて入ってみると、ここがパーマカルチャーガーデンでした。マルティヌス・ハウスは1921年に建てられた家で、現在の所有者によって気候風土と調和したバウビオロギーの考え方に基づいて改修されたそうです。家を取り囲むVortexガーデンは、パーマカルチャーの原則のもと生態系にヒントを得たかたちでアーティスティックに造型されていて、渦巻きや卵のモチーフが随所に見られます。あちこちに銅製の灯篭が置かれたり、飛び石が並んで、水場や植物のアーチへと導きます。石段やループが立体的な庭を作り出しているので、そーっと歩かなくては足元を取られてしまう。薄明かりのなかを歩いていたら、こないだの秋に訪れた大分の臼杵の竹宵を思い出しました。風情のある夜も良かったけれど、今度は昼間に訪れたいな。
家の東向きの大きな窓の外装にはさまざまなモチーフのモザイクが敷き詰められています。うまく写真に取れませんでしたが、興味のあるかたはこちらの写真ギャラリーで。
家の内部には1本の木をくりぬいて作った家具などが置かれています。ダルムシュタットといえばパッシブハウス発祥の地としてエコロジー建築も有名ですが、マルティヌスの家は建築やアートに興味ある人には魅力的なスポットでしょう。一人1泊108ユーロで宿泊もできるそうなので、友人が訪ねてくる際などにもお勧めしたいと思います。
家に戻ると、丘の上でフィナーレの花火が打ち上げられているのがキッチンから見えました。